芥川 竜之介
他をあざけるものは同時にまた他にあざけられることを恐れるものである。
◇今日の言霊は、大概の教訓的な名言の構造ではない。「他をあざける
ものは、また他にあざけられる」というのが、一般的な構造だが、今日
の言霊は、「他をあざけるもの」の心理や原因を言っているのだ。
◇自分が他人にあざけられるのを恐れるあまり、自分がまず他人をあざ
けて難を逃れると今日の言霊は言うのだが、もしそういう認識を持って
いれば、たとえ、他人にあざけられても気にせずにすむ。
◇他人をあざける人間は、自分が他人にあざけられるのを恐れているか
ら、まず他人をあざけって安住の状況を作ろうとしているだけなのだ。
そう思えれば、他人に言われる数々のあざけりは、そんなに重症にはな
らないかもしれない。
◇他人への誹謗中傷は、それを言う人の弱さを表している。それは、大
概の人がそう思っているが、その中に自分が入るとそのことを忘れてし
まう。言われる当事者としても、言ってしまう当事者としても。
◇人間の弱さが、人間を傷つけるのだ。そのことを私たちは忘れずにい
たい。

