「見回り」(後編)
○前回のあらすじ
帰宅時間の遅い生徒が増え、授業終了後の見回り強化がミーティングで
決められ、早速、その日の授業後、コンビ二を中心に見回りに出た。
そして、塾から一番近いコンビ二で中2の男子を発見した。
コンビ二の駐車場付近で授業を終えた中2の男子が2人。亮太と正人だ。
まったく、よりによって塾から一番近いこのコンビ二で寄り道するとは。
声をかけようと近づいて行こうとすると、コンビ二から「あちぃ、あちぃ」
と言いながら俊平が出てきた。
「発見!」
亮太と正人に話しかける。二人とも駐車場のアスファルトへ直に腰かけて
いる。
「わっ、先生、何やってんすか?」と亮太。
「何やってんすかじゃねぇよ。見回りだよ。旨そうなもん、喰ってるね、
先生のためにありがとう」
二人はカップ焼きソバを食べていた。
「あっ、先生、ちょっと喰いますか?いいっすよ」
言いながら、カップと箸を渡そうとする正人。冗談も通じないか・・・。
コンビ二の入口から「あちぃ、あちぃ」と言いながら出てきた俊平が
僕を見つける。
「あっ、先生!あちっ、うわっ!!」
僕がいるのに驚いたのか、お湯が満杯に入ったカップ焼きソバをアス
ファルトの上にひっくり返してしまった。
「あぁ~~」
慌てて拾おうと、素手で麺をつかむ俊平。
「あちぃ!!」
『あちぃ』に決まってる。まったく憎めない奴だ。
「お前何やってんだよ、しょうがねぇな」。俊平に亮太が声をかける
「いいよ、半分、俺のやるよ、喰えよ」と焼きソバを渡す。
亮太の意外な優しさと、親分肌なのを発見し、感心してしまう。
友情とか思い出とか、そういうのが生まれる瞬間って、こんなちょっ
とした場面なのかもしれない。
僕もそうだ。
友人達の多くの何気ない一言や行動に随分と助けられた。きっと彼ら
は覚えちゃいない。けれども、僕は絶対忘れない。
「さて、食ったら、帰るぞ。もう寄り道はすんなよ」と三人に言う。
「はーい」と素直な三人。
「まぁ、でも、こういうのが楽しいんだよな」
思わず本音が出てしまった。
「おっ、先生、さすが、そのとおり!」
亮太がおどけて答える。
「他の先生は黙っといてやるから、もう二度と寄り道すんなよ。
もし、するんなら、こんな塾の側でやんじゃねぇぞ!」
「先生、話が分かるねぇ」
「バカ!ほんじゃ、片付けていくぞ」
空になったカップをゴミ箱に捨て、そして、もう「あちく」はない
アスファルトにひっくり返った焼きソバを三人は手ですくった。
○(登場する子供は仮名です。)
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)
http://www.management-brain.co.jp/
※これより前の『ある日の教室』は、MBAホームページをご覧下さい。

