村上 龍
◇私たち人間には、様々な欲求がある。野生動物と人間の違いは、この
欲求が多岐にわたることとその欲求に歯止めがないことだ。
◇野生動物は、自分自身の生存のために、ある一定の量と質の中で欲求
を満たすが、人間だけは、無制限に様々な欲求が生まれ、その欲求は、
無制限に量と質を追い求める。
◇野生動物は、本能が自分自身の行動を制御するが、人間は、その本能
が、壊れていて、自分自身を制御することが自然と行なわれない。
◇人間だけは、自分の努力で、理性というものを使って、自分自身を制
御する。つまり、人間は、欲求と理性の戦いの中で生きているのだ。
◇しかし、私たちの欲求は、理性との対立構造だけを生むものではない。
理性を後押しする欲求も様々にある。その一つが、今日の言霊の中の自
分自身と他人との関係に根ざす欲求だ。
◇私たちは、自分と他人、自分と環境との関係性の中で生きていく存在
だから、その関係性に少しでも貢献したいという欲求が当然出てくる。
◇自分のことを他人に認めてもらいたいし、自分も他人の役に立ちたい
という欲求は、誰にでもある。ただし、その行動自体が、難しいからな
かなか出来ないだけだ。
◇そういう欲求に後押しされて、理性が、自分のためにも他人のために
も有効に使われるようになるのだ。
◇私たちの世界は、今後益々困難な状況になっていくだろう。その時に
この関係性を維持したいという欲求、他人のために自分が貢献したいと
欲求をどんどん現実にしていくことが大切なことなのではないかと思う。
◇そのために、みんなの善意をあげつらうような風潮に世間がならない
ようにしたい。

