塾経営、塾の起業コンサルタントが語るブログのトップへ戻る
« エマソン || アナトール・フランス »

「申告」(後編)

○前回のあらすじ

授業で毎回行う小テストで、自己採点後の申告では、いつも満点の真治
(小6・受験)。

ある日の授業。明らかに誤答があったにもかかわらず、真治は「10点満
点」の申告を行った。

文法テストの解答・解説を行い、得点をきいていく。真治の名前を呼ぶ。
ぼそっと彼は言った。


「10点」


明らかな虚偽申告だった。


僕は彼の座席へ行き、裏返しになっているテストを手に取る。誤答がそ
のまま記入されていた。もちろん10点ではない。


瞬間、僕は、彼の頭を思いっきりはたいた。


みんな驚いたことだろう。しかし、なぜ、僕がそんな行動に出たのか、
その答えは一目瞭然であったはずだ。誰も声を上げない。静かな教室、
冷えた空気。


僕は何も言わず、教室の前に戻ると、真治の次の生徒から続けて得点
を聞いていった。


その後、授業はいつもどおりの雰囲気で進んだ。もっとも、そう感じ
たのは僕だけで、彼らは心に何らかの引っ掛かりを持ったままだった
ろう。もちろん、真治は授業内容など、頭に入らなかったに違いない。

どうして、虚偽申告なんかするのだろう。生徒にとって、授業の小
テストの結果を虚偽申告するメリットは全くない。


小テストなんてものは、結果よりも、自分の日頃の学習の状況や授
業で学習した基本内容の定着度を知るためのものである。


間違えた箇所は自分の弱点である。生徒は、授業後、間違えた箇所
をもう一度やり直し、僕のところへ持ってくる。その際、僕がアド
バイスを与える。


虚偽申告した場合(カンニングも同様であるが)、ミスがそのまま
流れてしまい、自分の得になることなど、一切ない。何のための
テストなのか、そのことを彼らは十分に理解しているはずである。


それだけに真治が虚偽申告をしたのが許せなかったし、つい逆上
してしまったのだ。

しかし、と今なら思う。そんな誰も得しないことをなぜ彼はして
しまったのだろう。もっと言えば、何か彼が「得」するからこそ
の虚偽申告だったのではないか。


彼を虚偽申告に駆り立てたものがあったはずだ。それが何かを考
えてやることが必要だったのではあるまいか。


親のプレッシャーがあったのかもしれない。周りの生徒の結果と
自分を比べて、それが焦りになっていたのかもしれない。


もっと突き詰めれば、教師の、いや、僕の、「小テストなんて満
点とって当たり前」という指導が彼を追いつめたのかもしれない。


その心情を考えもしないで、いきなり一発である。しかも、他の
生徒がいる前である。その行為は決して正しくはなかったはずだ。

その日の授業後、やり直しを持ってくる生徒の一番最後が真治
だった。その間違いの箇所についてもう一度簡単に指導する。


確認が終わり、去り際、真治が僕に言った。


「先生、ズルしてごめんなさい・・・」


うつむく彼に僕は言った。


「うん、いいよ」


間違い直しを持ってくることも、そうやって謝ることも、相
当な勇気が必要だったことだろう。


どうして僕は、彼のその勇気を認めてやれなかったのだろう。
「ちゃんと謝れるなんてすごいな」と言ってやれなかったの
だろう。


僕の一方的な気持ちを押し付けて、ただ逆上して、彼を苦し
めてしまったかもしれない。今振り返れば、もっと救いよう
のあるやり方があったに違いないと思っている。


○(登場する子供は仮名です。)

合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)

http://www.management-brain.co.jp/

塾の起業、経営に役立つMBAのメルマガへの登録はこちらから

MBAをお気に入りに追加する 塾経営のサクセスネットMBAのホームページはこちらへ

カレンダー

2010年08月
Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
塾の起業、塾経営についてお電話ください。045-651-6922まで。