今回の入試制度の話は主に神奈川・東京をもとにしています。各県によ
って入試制度はさまざまであることを最初に断っておきます。
「お母さん、中学校の三者面談では、あくまで第一志望は公立のK高校
だと担任の先生に伝えてください。そして、K高校の押さえとして私立
の併願のことを聞いてください。
私立一般受験のことは『今までがんばって勉強してきたので、チャンレ
ンジとして私立のK高校とH高校の一般受験をしたい』という言い方で
お話してください。
もし受かっても『公立へ行かせようと考えている』と、とりあえず伝え
てください。そのことは実際に合格してから考えても遅くありませんか
ら」
難関国私立高校進学クラスの中3の進路面談では、たいていこのような
ことを保護者の方に伝える。もちろん、難関と言われる私立高校を第一
志望とする生徒が多いのだが、あえて、こんな言い方をしてもらう。
塾では11月中旬から末あたりにかけて必ず進路面談を行わなければな
らない。その大きな理由の一つが「中学校の三者面談対策」である。
中学校では12月に入ると担任教師と生徒・保護者の三者面談を行う。
内容はもちろん高校受験のことである。
では、なぜ「中学校の三者面談対策」が必要なのか。
ここで、ちょっと私立高校の入試について説明しておこう。私立高校
と言っても入試のパターンはおおよそ4つである。
多くの人がパッと思いつくのは、大学入試や中学入試のような『一般
入試』だろう。これは、入試当日の試験の点数のみで合否が決まる。
学校の内申点は合否の点数に入らない。いわゆる難関と言われる私立
高校のほとんどが一般入試を採用している。
次に『推薦入試』がある。これは試験として、面接や小論文が課され
ることが多いが、ほとんど学校の内申点で合否が決まる。各学校から
『推薦基準』が出されており、その基準に足りていれば試験を受ける
資格が与えられる。
例えば、『9科目で内申点27以上』(オール3以上)という基準が出
ている場合、27に満たない生徒は推薦入試が受けられない。36を
満たしていれば、よほどのことがない限り合格は間違いない。
ただし、推薦入試の場合、他校の受験はできず、合格後は必ずその高
校へ進学しなければならない。(私が知る限り、例外は1校だけである。)
さて、これだけなら分かりやすいのだが、事はそう簡単ではない。や
やこしいのはここからである。
一般入試、推薦入試以外に『単願入試』、『併願入試』という制度があ
るのだ。
「単」という字からも分かるように、『単願入試』は極めて推薦入試
に近い。推薦入試との違いは、「内申点の基準」、「入試日程」、「筆記
試験」の有無である。
単願入試は推薦入試より内申点の基準が高いのが普通だ。例えば、
同じ学校の推薦入試の基準が『9科目で内申点27以上』だとする
と、単願入試では『9科目で内申点30以上』といった具合になる。
もちろん、この内申点に達していなければ、受験資格はない。
また、単願入試は筆記試験を課せられる。私立なので、英数国の3
科目のケースがほとんどだ。入試日も推薦入試よりも遅い。
筆記試験を課せられる「推薦入試」だと考えると分かりやすいかも
しれない。よって、推薦入試同様、他の学校の受験は認められない。
筆記試験はあるが、よほどのことがない限り、―3科目全て一桁の
点数だった、入試会場で暴れたなど―合格である。僕の経験の中で
は不合格だった生徒は皆無である。
一方、併願入試は他校を受験してもよい。ただし、その他校とは、
「公立高校」のみである。
つまり、公立高校を第一志望校とする生徒が「押さえ」いわゆる
「滑り止め」として私立高校を受ける場合に利用するのが、併願入
試である。
当然、推薦や単願よりも、入試を受けることができる内申点の基準
は高い。単願同様、筆記試験も課せられる。
公立高校を第一志望とするほとんどの生徒は万が一の公立高校不合
格に備えて「併願入試」を受験する。これもたいていの場合、よほ
度悪い点数を取らなければ合格となる。
ちなみに、「難関私立A高校を第一志望で一般入試を受験し、不合
格に備えてB高校の併願入試を受ける」ことは許されない。
一般入試なら、試験日程さえ許せば、何校受験しようが一向に構わ
ないが、ある私立高校の滑り止めとして「併願入試」を利用するこ
とはできない。(私は例外の経験はない)
これを踏まえた上で、なぜ「中学校の三者面談対策」を塾で行う
必要があるのか、お話したい。
いろんな思惑とテクニカルな話になってくる。
次回へ続く。(登場する生徒名は全て仮名です。)
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)
http://www.management-brain.co.jp/