「赤ちゃん」
ホントに突然である。あまりに意表を突かれ、イスからずり落ちそうに
なった。
ドタドタッと健太郎(小5受験)が職員室へやってきて、僕の横にすっ
くと立つ。そして言い放った一言がこれである。
「ねぇねぇ、せんせぇ、赤ちゃんってどこから産まれるの?」
なんだ、コイツはいきなりやってきてその質問は。しかも、他にも先生
が3人いる中で、なぜ、俺にそんなことを聞くんじゃ!
しかし、一体どう答えるべきか・・・。「コウノトリが・・・」などと
いう、それこそ子供騙しは通用しないだろう。
「どうしてそんなこと聞くの?」という困ったときの『必殺質問返し』
をしてもよかったが、なんだか泥沼にはまりそうだったので、しょうが
ない、正攻法でいくしかないと腹を括る。
ここまで考えることコンマ数秒。「イン○ル入ってる?」並のスピード
で僕の脳みそがフル回転する。
「女の人にはな、赤ちゃんを産むための穴があるんだよ!」
決然と言い放った。
「えっ、ここ?」
健太郎は自分の股間を触ってみせる。
「馬鹿!お母さんにチンチンはないだろ!」
「え~、じゃ、ここ?」
今度はこちらにお尻を突き出し、指をさす。
「馬鹿!お前、それはお尻の穴だろ!嫌だろ、赤ちゃんがそこから出て
きたら!!ウンチじゃないんだから!!もっと前のほうに赤ちゃんが出
てくる穴があるんだよ」
「え~、じゃぁ、この辺?」
健太郎は立ったまま足を広げ、指をさしている。
「うん、その辺、かな・・・」
これ以上深入りすると、収拾がつかなくなりそうだったので、そのあ
たりでやめておいた。
受付の職員の方も、他の先生方も、僕たちのやり取りを見て、何も言
いはしないが、明らかに失笑を浮かべているである。いや、嘲笑と言
ったほうが正しいか。
授業後、健太郎がまたしても職員室へやってきた。さっきの続きか、
と思っていたら、どうやら、理科担当のS先生に呼ばれたらしい。
S先生は落ち着いたバリトンで健太郎に話しかける。
「健太郎、卵を産む動物って覚えているか?」
うなづく健太郎。
「哺乳類は卵を産まないよな・・・」
どうやら、S先生は先ほどのやり取りを教科的に説明してくれてい
るようだ。子供が産まれる仕組みについて実に分かりやすく説明し
ている。
健太郎が帰り、僕が話しかけると、「いやぁ、授業でどうせ同じ話
をしますから」とS先生は微笑んだ。
餅は餅屋。この手の話しは次回から全てS先生に回そうと心に誓う
のだった。
(登場する生徒名は全て仮名です。)
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)
http://www.management-brain.co.jp/

