「納得」
学生時代の友人とたまに会って呑むことがある。
語らないですますことができるのなら、そう願いたいが、しかし、やはり互いの仕事の話になってしまうのはやむを得ない。
以前、大学時代の親友Kと呑んだときのことだ。最近、仕事で起こった面白い出来事が話題となった。
僕は、その週の授業で生徒が何気に発した一言について彼に話した。特に面白いというわけでもないと僕は思ったのだが、ぱっと思いついたのがそれぐらいだったのだ。
ところが、Kはその一言にひどく感心した。
「なんか、そういう感性ってええわ。すごいわ。」
関西弁が響いた。
子供はときに予想もしない角度でズバンとすごい一撃を放ってくる。
以前にも紹介したが、「次の四字熟語を埋めなさい」という問題で、『油○大○』を
『油分大量』と生めた男の子。
乾燥肌なのか、それともコッテリ料理に飽きたのか・・・。
そういう面白い解答・珍解答はかなり出現する。しかし、Kが感心したのはその手の面白解答ではない。
中学受験5年生の国語の授業。12人ほどのクラスで、男子は5人。その中の俊也という生徒が今回の話題の人物だ。
俊哉はとにかく熱心だ。漢字練習もノートにびっしりやってくるし、授業中も視線が熱い。挙手もよくしてくれた。
しかし、算数に比べると、国語の成績のほうは芳しくない。一生懸命なだけになんとかして国語を得意にしてやりたいなぁと常々思っていた。
ある日の国語の授業。今までとはちょっと変わった物語文の導入を行った。みんな、反応が良かったのだが、特に俊也はうんうんと何度もうなずいて授業を受けてくれた。
そして、あの一言が発せられた。
「先生の授業は『納得力』がある!』
ビシッと決まったのだが、隣に座る理穂はニコッとしながら、困ったように僕を見つめた。「言ってあげようか、どうしようか」という感じだ。
笑いながら僕は言う。
「俊也、それを言うなら、『説得力』だな」
「あぁ、そうか、説得力か・・・」
恥ずかしそうにつぶやた。
「『納得力』って『ホントに先生の授業がよく分かった』という気持ちがすごく伝わってくるで。そういう言葉や気持ちを大事にしたらなアカンやろ」
僕がただたんに「説得力」と訂正したことに対してKは言っているのである。確かに言葉としては間違っているのかもしれない。しかし、生徒の立場からすると、確かに「説得」ではなく、「納得」なのだ。
「確かに、お前の言うとおりだな」。
このときは素直に反省。そしてそう言ってくれる友に感謝だった。
(登場する生徒名は全て仮名です。)
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)

