松本 清張
人間には、先入主観が気づかぬうちに働きまして、
そんなことはわかりきったことだと素通りすることがあります。
これが怖いのです。
◇「専門家の時代から非専門家の時代へ」というキャッチフレーズが、
今から20数年前に流行った。流行ったというのは、語弊があるかもし
れない。私が学生だった時にイバン・イリイチを勉強している人たちの
間で流行っただけかもしれないから。
◇その時は、専門家の域に達した知見よりは、日常生活者の素朴な視点
のほうが、生きることにおいては必要なことなのだと散々言っていたが、
今でもその議論は、ある意味重要なものだったと思う。それこそ、今日
の言霊が指摘するように、専門家ならば分かりきったことだと見逃して
しまうことを素人ならば疑問に思うということがあるからだ。
◇最近、特にそういう疑問は重要度を高めていると思われる。素朴な疑
問は、実は私たちの日常生活を振り返るきっかけになっている。当たり
前を疑うことの重要性が、今まさに高まっているからだ。私たちは、も
う一度自分自身のすべてのこと、身の回りのことを自覚化するようにし
なければならないのだ。
◇当たり前のことをたまには疑ってみよう。そうすれば、日常を支えて
いる関係性の豊穣さに気がついて、私たちの生が、関係の中での生であ
ると知ることができるはずだ。いかに自分の生がみんなに支えられてい
るかがわかるはずだ。
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
代表 中土井 鉄信

