【記事】私学中の1割、72校で必修漏れ 文科省調査
朝日新聞(2007年2/27)より以下抜粋
全国の中学校について必修科目の履修漏れの有無を文部科学省が
調べた結果、私立72校で教科自体が設けられていなかったり、授業
時間が著しく少なかったりしていたことが27日、わかった。
履修漏れは昨秋、全国の高校で発覚したが、中学についてまとまった
のは初めて。音楽や美術など受験と直接関係がない科目が中心で、
国公立では問題はなかった。指導を通じて既に解消に向かっている
という。 同日の衆院予算委員会で、伊吹文科相が糸川正晃氏
(国民新)への答弁で明らかにした。
中学校は全国に1万891校あり、このうち私立は699校。
教科の履修漏れがあったのは全体の0.7%だが、私立に限ると
10.3%になる。生徒数では、2万1449人が履修していな
かったり、不適切な扱いだったりしたという。
教科等でみると音楽、美術、技術・家庭、道徳を設けていない
学校が38校あった。この四つに加え、社会、理科、特別活動の
計7教科等について47校で著しく授業時間が少なかった。国語科の
中の「書写」や「毛筆」も計184校で実施されていなかった。
中学は高校と違って単位制でないこともあり、履修漏れがあっても
卒業には影響しない。
糸川氏が「私立といえども、義務教育の学習指導要領が守られて
いないことをどう考えるか」とただしたのに対し、伊吹氏は「カリ
キュラムの編成などについて、教育委員会のチェック機能が必ずしも
十分でない」と答弁。教委のあり方を定めた地方教育行政法の改正で、
私立にも一定の指導をすることを検討していることに触れ、「今まで
の私学行政の中で抜けていた部分だと反省している」と述べた。
*私からのコメント
◇昨年の高校の未履修問題を発端にして、今回中学での調査結果が
公表されたわけだが、どうだろうか。前回の高校の時と今回の中学の
時とでは、何か事態が違うように思わないだろうか。
◇高校の未履修問題の時は、主役は私立高校以上に地方公立高校
だったのだが、今回は、公立中学ではまったくなく、私立中学に集中
している点で、何か前回とは違うものを感じないだろうか。
◇しかし、底流に流れているものは、変わらないのだ。なぜ、今回は、
私立中学校に集中しているのか。ここを考えると、事態は違っても、
底流に流れているものはなんら変わらないことが分かる。
◇底流に流れているものとは、大学合格実績に対する意識だ。
公立中学校では、大学合格に対して、なんら責任がない。責任が
あるといえば、高校合格ぐらいなものだ。そして、競争相手は、
大体が公立中学校で、校長会等の調整が適宜入るから、未履修問題は
起こりにくい。
◇それに比べて、私立中学校は、基本的に中高一貫教育と銘打って、
募集をしているのだから、中学校から大学受験に対する意識が強い。
6年間のカリキュラムは、大学受験のためのものだといっても良い
ぐらい、大学合格に対して意識している。余計な科目を履修させる
ぐらいならば、大学受験のための科目を徹底したいわけだ。だから、
こういう問題が起こるのだ。そして、大学合格が、学校の募集競争に
大きく影響する。
◇実は、これには共犯がいる。それは、保護者の期待やニーズだ。
保護者の方も人間教育といいながらも、大学合格をしっかり勝ち得て
もらわないと、6年間の投資が無駄になってしまう。大学受験に
向けて余計な科目は、極力していただかなくて良いと心の底では
思っている。教育行政のチェック機能の問題もあろうが、保護者や
社会の意識の問題も大きいのだ。
◇だから、この問題をただ、教育行政の問題として矮小化しないほう
がよい。政府として教育風土を変えるにはどうしたらよいのか、議論
するべきだし、国民に問題提起するべきだ。そうしないと、犠牲に
なるのは、子どもたちだ。
◇受験だけのために、教育プログラムを組むことの是非を問い、
子どもに対してどういう能力を身に付けさせるのかを問うことだ。
そして、その帰結として、学校制度自体のシステムを変革するべきだ。
高校終了試験(=バカロニアのようなもの)などの制度を導入し、
大学各々の基準ではなく、国家の基準を明示して、子どもたちの生活
経験や学力経験を評価する方向に向かうべきだと思う。
◇そういう議論が、この事件から興って欲しいと思う。
教育委員会の問題だけではないのだ。この問題は。
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
代表 中土井 鉄信
http://www.management-brain.co.jp/
※先週の『隗より始めよ!』に対して、
大変貴重なご意見をお寄せ頂きましたので掲載させていただきます。
【読者ご意見、ご感想】
教員の給与を見直すところまで話が出てきていますが、すべての問題
の原因を教員に押しつけているようで、先生方が気の毒です。
教員の指導力は、本当に落ちているのですか?
どんな根拠から指導力を測定し、低下したといっているのでしょうか?
落ちているとすれば、それはどんな原因からですか?
そういった検証はされたのでしょうか?
学力低下やいじめなどの原因は、教員一人一人の能力が低いから起こ
ったことだといわんばかりです。
学校現場は、小1プロブレムに象徴されるように、子どもの質が
かわってきていると思われます。私が子どもの頃は、たとえ授業が
(わからなくて)退屈だったとしても、授業時間は静かにしていた
ものですが、今は、高学年になってもそれが出来ないクラスもあります。
昔も「へんな先生」はいましたから、そんな先生がいない学校が理想
ではあります。ですけれど、実態を見ずに、管理だけを強化しては
現場の意欲を損なうのではないかと心配です。紙の上で議論をせずに、
現場を見てほしいです。熱心に、創意工夫をもってしごとをされてい
る先生がたくさんいらっしゃいます。役所は、管理するのではなく、
そういう先生方をバックアップする側であるべきだと思います。
また、教員の免許更新制を導入すれば、良い人材が集まらなくなるの
ではないかと心配です。これまで、一般の公務員よりも給与が良く、
やりがいがあり、創意工夫が出来、安定した職業だったから、優秀な
人材が集まってきたのではないですか?
小学生の子供を持つ母親として、公教育が管理教育になっていくこと
は、本当に恐ろしく思います。安心して公立学校に通わせられる、
血の通った学校を作ってほしいです。今は、まだまだ、先生方の熱い
気概が感じられるのです。
※大変貴重なご意見・ご感想をお寄せいただき、
どうもありがとうございました。