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「マイケル」(後編)

○前回のあらすじ

普段、国語しか教えていない僕が「新中学1年生準備講座」の英語の授業
を担当することとなった。


国語教師「荒木又衛門」は「マイケル荒木」と名を変え、授業に備えなけ
ればならなくなった。


歌にゲームにパフォーマンス。練習して授業に臨んだ。

緊張。


もともと肝っ玉は大きいほうではない。むしろ、この言い方も控え目な
くらいだ。思いっきり小心の僕である。


初めてのクラスで授業をするときは例外なく、緊張する。それが小3で
あれ、中3であれ。


しかし、毎週教えていた生徒達が大勢いるのに、こうまで緊張するとは。
いよいよ「マイケル荒木」デビューのときがやってきた。


「ねぇねぇ、英語の先生、誰?やっぱりU先生?」


授業前の職員室へ何人もの生徒が同じ質問をしにやってきた。U先生も
受付のTさんも、「さぁ、それはお楽しみ!」などとはぐらかしている。


「そんなに生徒の期待値を上げないで・・・」


心のつぶやきは当然、彼らの耳には届かない。


そして。


大きな声で「ハロ~~~!!」と教室に入り、気持ちを盛り上げる。


「えぇ!」とか「うわぁ!」とか、意味をなさない声々が教室に響く。


「ハロ~、マイネームイズ、マイケルアラキ」


一番前に座っている彩夏がキョトンとしている。彼女の大きな瞳にマ
イケル荒木はさぞ奇異なものとして映っていることだろう。


「又衛門じゃん!!」とやんちゃ坊主の仁志が大声をあげる。


「ワタシノナマエハマイケルアラキデス。ジャマイカカラヤッテキマ
シタ。マタエモンハワタシノフタゴノアニデス。ヨロシクオネガイシ
マス。ミナサンワタシノコトハ『マイケル』トヨンデクダサイ!」


なぜにカタコトか。それは僕がマイケルだから・・・。こんなつまん
ない冗談につきあってくれる子供達に感謝。

さて、練習の成果だが・・・。


4本線は力を入れすぎ、チョークをボキリと折ってしまった。当然、
「おー」という声は上がらない。


歌とダンスはCDの音量でなんとか誤魔化した。


一番盛り上がったのはやはりゲームだった。生徒達があまりにも楽し
げなので、ずっとゲームの時間にしたいぐらいだった。


カタコトの日本語はいつしかベラベラな日本語へ変わっていた。しか
し、授業の終わりのあいさつはやはり「グッバイ!」である。

8回の新中1準備講座を終え、「マイケル荒木」は引退、伝説の人とな
る・・・・・・はずだった。


しかし、室長から渡された4月からの時間割には中2と中1で『英語』
の文字が燦然と輝いていたのだった。


(登場する生徒名は全て仮名です。)


合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)

http://www.management-brain.co.jp/


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