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« 豊田 喜一郎 || 五木 寛之 »

高級料理店

MBAの事務所は、横浜の心臓部にある。県庁市庁日銀支店などは、
アンパンを食べ終わらないうちについてしまうと、アンパンマンをこぼして
いたとかこぼさなかったとか、話題になるほどの目と鼻の先にある。

歩いて4分のJR関内駅の向こう側には、知る人ぞ知る伊勢佐木町界隈の
歓楽街が広がっており、そのあたりは中国語、インドネシア語、タイ語、
ロシア語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、英語、フランス語、
ドイツ語などが飛び交う、国境の町のような雰囲気さえする大変な国際交流
地帯である。そこに近頃またまたふらふら降って沸いたような、飛んで入って
きたような言語がある。カラス語である。

 なぜ、こんな繁華な地域に、本来は山で鳴いていればよいカラスが現れた
のか。カラスは雑食であるから、そうとう複雑な味覚の持ち主といってよい。
つまりいろんなものを食べる、未知の物を食べてもみるということだ。
だから、味覚が鈍くては学習能力も鈍く、変なものを食べて下痢した記憶も
さだかでなくなり、天寿を全うする前に落鳥してしまう。ということで、
一度うまいものを食べてしまうと、人間同様、それを忘れることは難しいらしい。

このあたりには、むろん、庶民の行かない高級レストランから、下宿の学生さん
たちもせっせと通う大衆食堂までがそろっているから、カラスがやてきた理由は、
どうも、この界隈の料理にあると見当がつく。

 それで、先日、早朝出勤をしたときに観察してみた。すると、やっぱりそうか
という結果に出会った。つまり、ある高級レストランの前のゴミ袋から、大きく
て色艶のよいいかにも健康で楽して楽しく生きているといった風情のぴかぴかの
カラスたちが、高級食材のなかから選りすぐりながら、たっぷり味わっていた
わけである。このあたりに生まれ変わるとすれば、カラスになるのも悪くないと
思ったしだいである。


担当:関口

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