【記事】高校教科書、二極化 学力格差浮き彫り
朝日新聞(2007年4/1)より以下抜粋
『高校の主に2、3年生が来春から使う教科書の検定結果が30日
公表され、広がる学力格差に対応せざるを得ない状況が浮かび上がった。
小中学校の復習をより重視した版が出る一方、
「下げすぎは意欲を失わせる」と揺り戻しの動きも。
難関大学を目指す生徒向けには、
最新のノーベル賞を題材にする教科書も出てきた。
●苦手な生徒へ「工夫」、マンガいっぱい・分数を復習
○高校用では、もともと難易度に差をつけた教科書を出す出版社が
多い。3種類が主流の数学IIでは、新興出版社啓林館が今回、さ
らに内容を易しくした4種類目を出し、合格した。
○183ページ中、半分以上にイラストがある。うち20ページ弱
には吹き出しつきのマンガが載る。「数学が苦手な生徒に入り口の
ドアをノックしてほしい。マンガやイラストは思わず開いてみたく
なるように使った」と担当者。学習指導要領の範囲を超えて学べる
「発展」は、もちろんない。
○検定申請時には合格本の3倍以上のマンガを盛り込んだ。だが、
「学習内容との関連が不明確」などの意見が大量についた。同様に
マンガを入れて1年前に合格した数学Iに、教師から「かえってポ
イントが絞りづらい」との指摘が寄せられたこともあり、大幅に減
らした。ちなみに文部科学省は「マンガがダメなのではない」と説
明している。
○易しい教科書には工夫が随所に見られる。啓林館や数研出版など
では、小学校で習う分数の計算を復習用に載せている。「発展」の
逆の発想もある。東京書籍は、やや高度な内容に「チャレンジ!!」
の印をつけ、省略が可能なことを暗に示している。
○教科書編集に携わったことがある山形県立山形東高校の長澤義博
教諭は、ゆとり教育による授業時数の減少で、高校によっては計算
力が定着しないまま入学する生徒がいることを実感している。「高
校で一気に内容が進み、ついていける生徒とそうでない生徒でさら
に差が開く」と話す。
○世界史Aでは実教出版が、今回初めて2種類目を出した。ページ
数は15%の減だ。記述量を少なくし、図版を多用。視覚に訴えよ
うと、ブックデザイナーに初めて全ページの割り付けを頼んだ。
「見開き2ページを1時間の授業で」が目安だ。
○英語では、単語の読みをカタカナで表したものもある。大修館書
店は「高校進学時にアルファベットが書けない生徒さえいる。やは
り読めないと始まらない」。
○中学校用の「動詞の不規則変化表」を載せた本も。
文英堂は「11レッスンのうち、5までは中学の内容です」という。
○各社とも「中学が会話重視になった分、文法が身についていない」
という教師たちの悲鳴を受け、随所に「文法の復習」を配置。マンガ
や写真で見た目も工夫した。
●入試向け「発展」難化、相対性理論・ノーベル賞研究も
○難度の高い教科書では、各社とも大学入試を意識している。
○英語IIで東京書籍は今回初めて3種類の「選択的教材」を入れ、
規定数の英単語に加えさらに200語学べるようにした。担当者は「
リーディング用はもっと入試対策を打ち出し、予備校で教えるような
『読解技術』も充実させた」という。
○全ページ数に占める「発展」の割合が5.5%と最も高い教科の化
学II。数研出版は2種類のうち難しい方で、「発展」の項目を前回
検定の3倍にした。東京書籍は「化学反応の速さと平衡」に力を入れ、
約60ページ、教科書の厚さで25%分増やした。担当者は「入試で
多く出題される分野だからと、高校から要望があった」という。
○生物IIの「発展」も前回検定時の倍に。昨年のノーベル賞の対象
になった「RNA干渉」を入れたのは第一学習社。「酵素と活性化エ
ネルギー」「脂質やたんぱく質の分解経路」など2次試験に出やすい
9項目は結局、全社横並びになった。
○指導要領を超えた内容でも、入試の問題文で説明される事柄は各社
が「発展」で扱う。物理IIだと、「多原子分子のモル比熱」や「R
LC直列回路」などがそれにあたる。アインシュタインの「相対性理
論」を扱う教科書もある。
○内容が充実する半面、懸念の声も出始めた。
○関西の私立校の教諭は「『入試に出るかも』『他社に後れをとるな
』という思いから、どんどん詰め込まれる。大学の先生は高校の教科
書に基づいて問題をつくるから、相乗効果で際限なく入試が難しくな
るのでは」と心配する。』
*私からのコメント
◇今回の記事だが、私が、従来から主張している2002年の教育改
革(教育の自由化)=ゆとり教育は、大衆教育とエリート教育を分け
て、教育の二極化を促すための仕掛けだという論拠になるものだ。
◇教育改革(教育の自由化)=ゆとり教育が、学力低下問題を引き起
こし、国民に学力低下は、問題ですよ!と警鐘を鳴らし、学力低下問
題を解消するために様々な工夫をすることは、非常に重要なことだと
国民を説得し、国民に教育における学力問題を定着させた。
◇今回の記事は、そういう背景から様々な工夫が許され、普通科高校
でも、高校によっては、学習内容のレベルに非常に大きな格差がある
教科書を使うことが、当然とさせる状況を作り出したということだ。
高校における大衆教育とエリート教育の完成だとも言える。
◇持論はそれぐらいにして、今回の記事に、皆さんは、違和感を覚え
ないだろうか。この記事は、高校の教科書の例だが、この記事を読ん
でいると前半部分は、どうも中学生の教科書のような気がしないだろ
うか。
◇中学生の教科書であれば、記事の「数学が苦手な生徒に入り口のド
アをノックしてほしい。マンガやイラストは思わず開いてみたくなる
ように使った」という担当者の声は、十分説得的だが、高校の教科書
で、改めてそんなことを言われてもどうなんだろうという気がしない
だろうか。
◇実は、こういう発言の中に中学校でも大きな二極化が進行している
ことが分かるのだ。義務教育の中で大きく格差を生じさせて、中学校
の勉強もおぼつかない状況を作り出して、高校に送り出していくのだ
から、そういう発言になるのだ。教科書会社の人は、正直だから、中
学校の勉強も出来ない高校生のために、教科書を作りましたよ!と言
っているのだ。
◇こういう状況を作り出した文部省(旧)=文科省の責任を問うべき
だと私は思う。私たちは、教育行政に対して、もう少し、結果責任を
追及するべきだ。
◇私たちの知的インフラがどんどん後退して、一部のエリートだけが、
私たちの知的財産を活用できるような状況になりかねない。そんかこ
とでは、日本の将来が、危うくなってしまうだろう。
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
代表 中土井 鉄信
http://www.management-brain.co.jp/