「場面設定」(前編)
職員室。質問なのか、それとも、個別に呼び出されたのか、中3の麻美が
なんだか納得いかない顔でM先生の話を聞いている。
怒られているのではない。ある英語の一文の和訳の説明を受けているのだ。
「えぇ、意味分かんない!そんなこと言う?」
M先生の和訳がすんなり頭の中に入ってこないようである。
もとの英文が何だかは分からなかったが、その英文の和訳はこうである。
『あなたはいくら必要ですか?』
麻美は「そんな日本語、普段、言うのか?」、「いったい、どんな場面で
使うのか?」と疑問に思ったらしい。
確かに。そういう疑問が湧いてきて当然だろうと僕も思う。
むしろ、他の生徒たちは麻美のような疑問をなぜ抱かないのか、いや、
もっと言えば、英語を教える先生達が、なぜ同様の疑問を持たないのか
が不思議でならない。
例えば、ある教材会社の塾用の英語の中1テキストには次のような例文
があった。
『 This isn’t a cat 』 (これは猫ではありません。)
「これは猫ではありません」。
こんなことを日常で言うことなんてあるのだろうか、ということを先生
はもっと考えてもいいのではないかと思う。
誤解しないでほしいのだが、『 This isn’t a cat 』を教える必要はな
いということではない。
中1の最初の段階では非常に重要な文法事項であるし、知っている単語
として「cat」は至極妥当だろう。
教える側にちょっとした工夫がほしいのだ。
英語は言語である。言語はコミュニケーションの手段である。
『 This isn’t a cat 』なら、こう言わざるを得ない場面、どうして
もこれを誰かに伝えなければならない状況があって、初めて『 This
isn’t a cat 』が生きると思うのだ。
だから、もし、日常での場面が思い浮かばないのなら、教師はその状
況を設定してやる必要があるのではないか。
例えば、この写真。
http://www.management-brain.co.jp/1.jpg
この写真の説明で『 This isn’t a cat 』と言うのなら、なんとなく
納得してくれるのではないか。
「これ、猫じゃねぇよな。じゃぁ、『猫じゃない』っていう言い方を勉
強しようぜ!」
『 This isn’t a cat 』。
どうだろうか?
こんな例は他にもある。例えば「受動態」。これも僕は前から疑問に思
っていた。
○次回へ続く
(登場する生徒名は全て仮名です。)
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
荒木 崇(チーフ・コンサルタント)

