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「帰国」(前編)

舞とお母さんが塾へやってきたのは、確か5月の連休が明けた頃だった。


お母さんの話によると、「他にも2件ほど塾を回ったが、受付の段階で断
られた」とのことだった。


なぜか。ちょっとした事情があったからだ。


舞は小学6年生。中学受験を希望していた。今まで全く受験勉強をして
いない場合、小6の5月という時期は中学受験を始めるには決して最適
ではない。状況にもよるが、むしろ遅いと言わざるを得ない。


しかも、舞はアメリカ帰り。いわゆる「帰国子女」であった。現地で多
少の勉強はしていたらしいのだが、中学受験の勉強には程遠い。


女の子が比較的得意な国語も、アメリカ暮らしが長いため非常に不安で
あるということだった。


というわけで、他の塾が入塾を断るのも納得ができなくはないのだ。せ
っかく入塾していただいても志望校に合格できる学力を養える可能性が
高くないからだ。


しかし、こちらとしては、大歓迎であった。入塾を断る理由は何もない。
翌日、舞には授業を体験してもらった。お母さんもご一緒に見学してい
ただいた。


ちょうど、僕の授業だったのだが、「もっと、詰め込みで怖い雰囲気だ
と思っていましたけど、違うんですね。安心しました。」とお母さんに
おっしゃっていただいた。


こうして、舞は塾生となった。

舞とお母さんが問い合わせにいらっしゃった後、見学してもらって、舞
とお母さんが「やっていけそうだ」と判断した場合は入塾してもらお
うということで、室長と意見は一致していた。


「大歓迎ですよね、何の問題もないですよね」と僕。


「そうですね。他の塾は何で断ったんでしょうね」と室長。


ある確信が、僕にも室長にもあったのだ。


○次回へ続く
(登場する生徒名は全て仮名です。)

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