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« 早川 徳次 || 国木田 独歩 »

「電話」(後編)

○前回のあらすじ

個人担当の真子のお母さんから電話がかかってきた。しかし、なかなか
本題へと入らない。ようやく本題へ入るがその内容に少なからず驚いた。

「来月は真子の誕生日なんですけど、『荒木先生は授業中、いつも誕生月の
人を一番最初に当てるから、今からドキドキする』ってうちでも大騒ぎなん
ですよぉ」


「そんなこと、話してるんですか。じゃぁ、来月はホントに大活躍してもら
わなきゃいけませんね!」


冗談で応じるが、お母さんが電話をかけてきた意図が全く見えない。たいて
いすぐに本題に入るのだが。


「それで、荒木先生、今日はちょっとお尋ねしたいことがありまして」


「はぁ、何でしょう」


ようやく本題である。


「先生は今、おいくつですか?はっきりとした年齢をお伺いしたことが今ま
でなかった・・・ですよね?」


なんだか歯切れが悪い。


「二十七歳(当時)ですが・・・」


「あの、失礼ですけど、先生は独身でいらっしゃいますか?」


は???


「はぁ、そうです」


「今、お付き合いなさってる方とかはいらっしゃるんですか?ほんとに立ち
入ったことをお伺いしてすみません」


こりゃ、まさか。


「いえ、今現在はおりませんが」。


現在は、というところに自分自身のつまらないプライドを感じる。


「そうですか、実は・・・・」

真子のお母さんの用件は『お見合い』だった。知り合いに年頃の娘さんが
いるので、どうですか?というものだった。


まさか、生徒のお母さんからお見合いを勧められるとは。興味はあった。
どんなものか一度経験もしてみたかった。「さぁさぁ、後は若いものにお任
せして」なんてことを本当に言うのだろうか。


ただ、親も巻き込んで面倒な話になるだろうし、ただの興味本位だと、何よ
り相手に失礼だ。


即答も失礼かと思い、後日改めてお断りのお電話を入れた。「わざわざすみ
ません」と恐縮しきりのお母さんだった。

この話を受けていたらどうなっていたことだろう。どっかの社長の娘さんと
いうことだったので「逆玉の輿」だ。今頃、僕も社長と呼ばれていたかも。


「う~~む」


この「う~~む」に深い意味はない。意味は、ない。


(登場する生徒名は全て仮名です。)

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