「過去問」(中編)
○前回のあらすじ
夏期講習が終わり、9月に入ると、中学受験生は本格的に「過去問演習」
の指導が始まる。
志望校ごとに、生徒それぞれでいろいろと戦略が必要なのだが、当然、
学校の入試傾向に合わせるのに、随分と苦労する生徒もいる。千春もそ
の1人だった。
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千春の第一志望校はY女子中学。Y女子の過去問題を解いていく。過去
10年分の入試問題が収められている冊子を千春は購入した。
Y女子の入試傾向はほとんど変わっていない。10年分をざっと眺めても
それはよく分かる。
問題量は多い。記述問題も数問含まれており、かなり効率良く問題を解
いていかなければならない。
また、「語句」へのこだわりが入試内容から窺える。言葉遣いや意味など
を文章中の流れに即して答えさせる設問が目立つ。
過去問題演習を始めてすぐは得点が取れない。これはどの生徒も同じで
ある。本格的な総合問題を解くのはほとんどはじめてであるし、各学校
の傾向に慣れていないのだから当然である。気にする必要はない。
千春もほとんど点数が取れなかった。実力がないのではない。語句関連
の問題は落ち着いてやり直すと、ほとんど正解する。問題の量の多さに
手こずっているのだ。
3年分解くまでは、様子を見ておこうと思った。彼女は負けず嫌いで、
難しい問題にも必死で食いついてくる。漢字テストや知識テストも満点
でないと気が済まない。
最初からあれこれ口を出しても千春の場合、かえって逆効果だ。苦しん
で、でも、入試の傾向もつかめてきたぐらいに呼んでアドバイスをしよ
うと考えていた。
ところが、珍しく彼女が先に音を上げた。
「せんせぃ、問題が全部解けない!」
千春が問題集とノートを持って僕のところへやってきた。
○次回へ続く。
(登場する生徒名は全て仮名です。)

