「過去問」(後編)
○前回のあらすじ
夏期講習が終わり、9月に入ると、中学受験生は本格的に「過去問演習」
の指導が始まる。
志望校ごとに、生徒それぞれでいろいろと戦略が必要なのだが、当然、
学校の入試傾向に合わせるのに、随分と苦労する生徒もいる。千春もそ
の1人だった。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
負けず嫌いの千春が問題集とノートを持って僕のところへやってきた。
「せんせぃ、問題が全部解けない!」
もう少し彼女に話を聞いてみた。
「全部解けないってどういうこと?」
「Y女子の問題を3年分やったんだけど、全部最後まで終わらなかった」
「そうか。時間内に解ききれなかった問題も一応、解いたでしょ?」
「うん」
「それは結構解けてたよね」。この点はノートチェックで確認済みだ。
「うん」
「じゃぁ、時間内に全部問題解けたら、何とかなりそう?」
「うん、結構自信ある。でも、問題の数が多いから・・・」
制限時間は45分。漢字、物語、論説という3つの大問構成。
2本の文章にボリュームがあり、知識、選択、抜き出し、記述と盛り沢山だ。
「じゃぁ、今から先生がやり方を教えてあげるから、時間を計ってそのやり方
でやってみよう。ただし、人によっては、このやり方は合わない場合もあるか
ら、もし、千春がやってみて上手くいかないようなら、先生に報告してね」
で、テクニック的なことを彼女には教えた。中身もないうちからテクニックを
教えるとそれに走ってしまい、本末転倒だから、嫌なのだが、彼女の場合、そ
の心配はない。
「まず、最初に、文章読まなくてもできる問題をチェックしてみよう・・・」
数日後。
「先生、出来たよ!上手くいったよ!!」
ノートを持って、千春が職員室へ駆け込んできた。時間内に最後まで問題が
解けたらしい。そのおかげで点数も上がっている。
そして、千春のお母さんからもお電話をいただいてしまった。
「もう、本当に嬉しそうに話すんですよ。先生に教えてもらって出来るよう
になった、って」
千春、そんなに嬉しかったの?とちょっと意外に思った。まだまだこれから
だよ、と彼女には伝えなきゃなぁと感じるひねくれモノの僕であった。
(登場する生徒名は全て仮名です。)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

