最高の戦略が、リスクを生む!
『はじめに』
◇東進衛星予備校を展開しているナガセは、昨年買収した四谷大塚を全
国に売り出した。昨年の私どものセミナーで、ナガセの四谷大塚買収は、
非常に優れた戦略を生むものだと伝えたが、それは、受験という投資行
為で、価値の高い中学受験と大学受験を押えたものだったからだ。そして、
今年とうとう満を持して、四谷大塚を全国に展開し始めた。しかし、こ
の展開には、大きなリスクが待っているように思う。今回は、そのこと
について考えたい。
『最高の戦略が、リスクを増大させる!』
◇四谷大塚ネットを全国展開することはナガセにとって当然のことだが、
どういう形で全国展開していくのか、これは、考え物だ。ナガセ主体で
販売促進をしていくのか、もともとの四谷大塚サイドで、展開していく
かで、与える印象は随分違うはずだ。そして、戦略の成功プロセスも全
く違うはずだ。しかし、今回は、ナガセが主体になって全国展開を企てた。
東進衛星予備校のネットワークを使って。このことも、この最高の戦略
に大きなリスクを与えることになるかもしれない。
◇最高の戦略とは、小学生の上位生を確保し、小学生の段階から、東進
衛星予備校への流れを作っていくこと。次に大学合格実績の向上に欠か
せない、優秀生の名簿を早いうちから獲得できること(合不合テストデ
ータ)。サービスの拡大によって、ナガセという会社に対して、地方大手
塾が、依存度を上げること。中学受験の全国的なスタンダードを握ること。
大体このようなことが可能になる戦略だ。
◇この戦略は、ナガセ側から見ると、至ってまともな戦略だが、この視
点を東進衛星予備校に加盟している地方大手塾に移して考えてみよう。
そうすると、ナガセにとって最高の戦略が、最悪な戦略に見えてくる。
◇地方大手塾からすると、今まで現役高校生を囲い込む手段として、コ
ンテンツ提供をナガセの東進衛星予備校に頼んだだけで、東進衛星予備
校という看板で高校生を集めていたということではない。この看板が、
代ゼミでも、駿台でも、河合塾でも、何でも良かったが、三大予備校よ
りは、手が組みやすく、それなりに柔軟でもあったからだ。しかし、中
萬学院が、東進衛星予備校に参加した頃から、地方大手塾がこぞって入
るに及んで、ナガセの態度が尊大になり始め、ナガセ本体自体が地方に
進出するに至って関係性が、微妙に変化しつつあった。
◇そういう背景の中で、今回の四谷大塚ネットの全国展開なのだ。地方
大手塾からすると、優秀な小学生のコンテンツまで、ナガセに依存する
ことになるのかという恐怖が当然起こるはずだ。小学生と高校生でコン
テンツを握られるということは、ナガセに入学と卒業を握られるのと同
じで、せっかく集めた生徒をナガセに必然的に譲り渡すことになるのだ。
自由になるのは、中学受験しない小学生と公立中学生だけだ。地方大手
塾の権限がどんどん減ってしまう可能性があるのだ。
◇だから、この最高の戦略は、「窮鼠猫を咬む」ということが起こり得
る可能性を秘めているのだ。そして、衛星予備校というインフラ上の古
臭さだ。インターネットを使えば、さらに安いコンテンツ提供が可能に
なる時代なのだ。東進衛星予備校の対抗馬が、格安な値段でいつでも登
場する可能性があるのだ(地方大手塾が、そういう対抗馬に援助をすれば、
その速度は、非常に速まるはずだ)。そうだとしたら、今回の戦略は、
地方大手塾に対して、東進衛星予備校からの乗り換えを促す戦略になっ
てしまうかもしれないのだ。そういう意味で、最高の戦略が、リスクの
増大を生むというわけだ。
『経営者の視点』
◇逃げ道のない戦略は、昔からリスクの大きい戦略として避けられてき
た。人間の心理は面白いもので、強いものには巻かれようとするが、強す
ぎるものには、逃げようとするものだ。また今回の事例から分かること
だが、自分の側からだけ戦略を考えてみても、上手く行かないものだ。
相手あっての戦略なのだ。今回のナガセの戦略が本当に成功するのか、
失敗するのか今のところ、誰にも分からないことだが、大手塾の動向を
追っていくことで、自塾の戦略の参考になるのではないだろうか。今後
とも注目していきたいと思う。
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◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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