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« レオ・バスカーリア || 吉川 英治 »

「上から」(後編)

○前回のあらすじ

生徒が回答した授業アンケートの集計結果を見ていたら、中1のあるクラ
スの英語で『荒木先生がいい』という自由記述欄の意見を発見した。

しかし、僕はそのクラスでは授業を受け持っていない上に、英語は、中2
で週1コマ担当するだけで、ほとんどが国語の授業である。

僕の授業を受けたことがないのに『荒木先生はいい』とは書けないはずだ。


「なんでかな・・・」。振りかえって接点を探してみる。
・・・あった。一つ。
「もしかして、あれ、か」。

当たり前だが、先生だって風邪を引く。冠婚葬祭の類に参加しなければ
ならないことだってある。やむを得ない事情で授業を休まなければなら
ないことがある。


先生が休みだからといって、当然、授業そのものをなくしてしまうわけ
にはいかない。というわけで、代講となる。早い話、その日の授業だけ、
休んだ先生の代わりの先生がやってきて教えるということだ。


もちろん、僕も受け持ちの授業を休んだことがある。しかし、本当にど
うにもならない場合に限った。責任感だとか、そういうことが理由では
ない。


代講って面倒くさいのだ。


わざわざ代講に来てもらうので、なるべくその先生を煩わせないように
手厚く準備と引継ぎを行わなければならない。


例えば、
「テキストの15ページの説明文を行ってください。宿題は16ページの
1番と2番です。確認テストを用意しておくので授業の最初に行ってくだ
さい。満点合格です。授業前に全員の漢字ノートを集めて、漢字テスト中
にチェックしてください・・・・」などなど、いろいろ細かいことをお伝
えする必要がある。


全校舎、同じカリキュラムで授業は進んではいるけれども、やっぱり、そ
の先生や校舎ごとにルールややり方がある。そういうこともお伝えしてお
かないと、その先生が混乱してしまい、申し訳ない。


自分で言うのも何だが、僕は特に小心なほうなので、「何か失礼なことが
あったらどうしよ・・・」と不安になってしまう。ならば、自分でやっちゃ
うのが一番いいや、と思ってしまう。


 もちろん、代講をお願いすることもあれば、代講を頼まれることもある。
休む先生がいる場合、なるべく校舎内にいる先生で授業ができないかと室
長は考える。


その週だけ時間割を変更したり、休みの先生がいれば、出勤してもらった
り、場合によっては2クラスを合併して授業を行ったりする。


そう。中1のそのクラスで一回だけ代講に入ったことがあったのだ。しか
も、科目は「英語」。確か現在進行形の導入授業だった。そのときの印象
が残っているのだろう。


代講に入るときも気を使う。粗相があってはいけない。指示どおりに授業
を進行しなければならない。内容的にもしっかりと教えなければ、次の授
業で担当の先生が困ることになる。


しかも、同じ校舎内で代講に入る場合、いつ、そのクラスで授業を受け持
つことになるか分からない。「あぁ、あの先生、一回授業受けたけど、全
然面白くなかったよ」なんていう印象を残したくはない。


人のため、というより、自分のためにそのときは、かなり頑張った記憶が
ある。


以前見たベテランの先生の英語の授業のスタイルを思い出し、テンポ良く
行うことを心がけた。生徒の顔が上がるように、人が動いている様子の絵
を自分で描いて授業で使った。中1はまだ素直なので、なるべくたくさん
コーラスリーディングを行い、声を出させた。


準備から授業まで相当エネルギーを使った。普段では考えられないことだ
った。いかにいつもは怠けているのか、自分で思い知らされた。


そして、授業後。栄子が、教卓の僕のところへ、つかつかっとやってきて
言った。


「先生、授業上手いじゃん!やるじゃん!!」


う~む、なんたる上から目線・・・・。

『荒木先生がいい』。
あのときの彼女かもしれないな、この一言。何にせよ、生徒から評価して
もらったのは嬉しいことである。


(登場する生徒名は全て仮名です。)

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年内のメルマガはこれで最後です。2007年もありがとうございました。
皆様、良いお年をお迎え下さい!

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