事実のようで、事実でない話
◇私たちの日常会話の中では、「事実」のように伝えられて、「事実で
ない」ことがたくさんあります。親友のAさんの話を聞くBさんになっ
たつもりで次の会話例を読んでみてください。
A「山田は本当に暗いやつだよ」
B「なぜ?」
A「だって、山田は一日中パソコンと向かい合っていて、声をかけても、
生返事するだけで、全然話が盛り上がらないだよ。本当に暗いやつだよ」
◇山田さんに対する皆さんの好意のレベルはいかがでしょうか?恐らく、
好感を持った方は多くは無いでしょう。むしろAさんの話に同調して「山
田さんが暗い」と感じた方が多いのではないでしょうか。
◇それは、まず、親友の最初の発言で、Bさんあなたは、Aさんの主観の
枠組みにはまっているのです。そして、あなたは、ネガティブな印象の枠
組みで、過去に出会った暗い人物や体験を思い出しながら聞くことで、A
さんの主張するとおりの人物像をイメージしてしまっている可能性が高い
のです。
◇そして、Aさんが語る山田さん像は、事実でしょうか?「何一つ」「全
然」といった極端な物言いはAさんの見方であり、主張であるので、事実
ではありません。もし事実だとすれば、「あー。とか、うん。とか、言う
ことがある」「注意したことどおりできないことがある」とか「守らない
ことがある」と言うことです。
このように、私たちの日常会話では、事実のように語るものの、語り手の
主観や意見を表現しているものが非常に多いのです。
◇もし、Aさんが「私は、山田は暗いやつだと思うんだ。一日のうちパソ
コンの前に座っていることが長いと感じるし、声をかけると『あー。』と
か『うん。』という返答で話が終わることが多く、話が盛り上がらない感
じがするんだよね。」といったら、山田さんの印象は先ほどとは違ったも
のになったのではないでしょうか。もしかしたら「山田さんは、仕事に夢
中になっているのかもしれないね」なんて余裕の受け答えができるかもし
れませんね。
◇「私は、~と思う。」と、Aさんが切り出すことで、「私の主観なのだ
けれど・・・」という前置きが聞こえますね。おかげで、「山田さんが暗
い」という話を事実として誤解しなくて済むわけです。
◇ところが、日常会話では、この「私は、~と思う。」が省略されること
が多く判断を誤る危険があります。
◇他者の話を聞く時は、「事実のように語られることの多くに、話し手の
主観がたくさん含まれている」こと念頭において、事実を聞きだせるよう
に、質問を有効に使ってみましょう。
「どのくらいの時間パソコンの前にいるの?」
「生返事って、具体的にどんな返事なの?」
「全然話が盛り上がらないって、どんな様子のこと?」
なんて質問をしたらいかがでしょうか。

