達人
面白いように、ポンポンと、的となったドラム缶に当ててゆく。
その様子に目を見張った。手で投げているわけじゃないからだ。
白球を右手ですくい、バットをコンッとぶつけ、ボールを飛ばす。
いわゆる「ノック」というやつだ。
たまたまテレビで「ノックの達人」という人が紹介されているのを見た。
その人が凄かった。
ホームベース上から外野へのノック。
野手は定位置だが、イスに座っている。
達人がノックをする。きれいな弧を描いて、白球は座ったままの野手の
グラブに収まった。
その人は少年野球チームの監督さんだ。有名なチームらしく、プロ野球
選手も輩出しているらしい。
ノックが上手いのも当然なのだろうが、やはりその精度が尋常じゃない。
「どうして、そこまでになったんですか?」という質問に達人はこんな
ふうに答えていた。
「低学年の子供には取れる球を打ってやらないと、自信をなくしてしまう」
おそらく、子供たちの野球レベルに合わせて、ノックを打っているうち
に達人になったらしい。「取れる球を打ってやる」というこの考えに感銘
してしまった。
ボールが取れたから嬉しい。取れたから自信になる。こうして野球が好
きになってゆく。
子供のやる気や自信は最初からあるわけではない。なにかしらの成功体
験があって、初めてやる気や自信が生まれるのだ。たとえ、それが小さ
な成功体験であっても。
勉強も同じだと思う。勉強に対して始めからやる気がある子供なんて、
めったにいないだろう。勉強なんかするより、友達と遊んでいるほうが
楽しいに決まってる。
達人は、ノックによって、子供たちに自信を与える。
僕たちは、何によって、子供たちに自信を与えることができるのだろう
か。
(生徒名は仮名です。)
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◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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