「探す」(前編)
塾で一番あってはならないこと。
それは、生徒の成績が下がることでも、不合格でもない。
もちろん、それらが起こることは望ましくない。
成績を上げる、志望校に合格する。
そのために生徒たちは日々、頑張っているのだから。
しかし、それ以上に、最上級に起こってはならないことがある。
それは、生徒の安全に関わることだ。
生徒が怪我をしたり、ましてや命を落とすようなことがあってはならない。
塾にいるときはもちろん、通塾、帰宅の安全にも配慮しすぎてしすぎるこ
とはない。
欠席する場合は、保護者の方からあらかじめご連絡をいただく。遅刻する
ことが分かっている場合も同様だ。
居残り等で塾を出るのが遅くなる場合は、その旨をご家庭に電話でご連絡
し、帰宅前にもう一度、今から塾を出るということをお伝えする。
ご家庭から連絡がないのに、授業が始まってしばらくしても生徒が来ない
場合、確認をしなければならない。
特に小学生の場合、保護者の方がきっちりとご連絡をくださることがほと
んどだから、通塾途中で何かがあった可能性もある。
「裕未がまだ来ていないんですけど、連絡ありました?」
算数担当のK先生が職員室にやってきて、受付スタッフのEさんにたずね
た。小4の算数の授業が始まっていたが、裕未がまだ来ていないらしい。
「いえ、連絡ありません。一応、お母さんに電話してみます」
「お願いします」と言って、K先生は授業に戻った。
お母さんへ確認をしたEさんは焦った調子で僕にこう伝えた。
「裕未ちゃん、随分前に家を出たって!」
○後編へ続く。
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