「剣道と先生と命と」(前編)
人の命の重さを初めて実感したのは、小学6年生だった。もしかすると
それが最初で今のところ最後かもしれない。
小3から地元の少年剣道団で、週3回剣道を習っていた。たいていの子
は1年生か2年生から始めるので、同じ学年で僕は一番遅いスタートだ
った。
練習はキツイ。ただただキツイばかりで面白くも何ともない。重い防具
をつけて2時間動きっぱなしだ。係り稽古などという、先生相手にひた
すら休みなく打ち込みをする練習なんて、逃げ出したいくらいだ。
夏の暑さときたら尋常じゃない。汗から汗が出てるんじゃないかと思う
くらい、全身びっしょりだ。ヘトヘトで体も動かないのに、「もう一本」
である。
今思えば、どうして辞めなかったのか不思議なくらいである。小さい頃
から小心だったためか、逃げ出す勇気もなかったということだろう。
そんなに苦しい思いをしているのに、僕ときたらこれが本当に弱っちぃ。
練習試合をしても負けっぱなし。女の子にさえ、あっさりとやられてし
まう始末。
考えてみれば、苦しい思いをしているのは僕だけじゃない。みんな同じ
ように練習している。当然、みんなも上達する。素質もなく、みんなよ
り遅く始めた僕が弱っちぃのは当然のことだ。
面白いもので、こうも負けが続き、負けるのが当たり前になってくると
試合でも勝とうという気がなくなってくる。「何が何でも勝ってやろう」
なんていう気持ちよりも「適当にやってさっさと負けて終わろう」など
と考えてしまうのだ。「どうせ真面目にやっても無理だから」と。
だから、当然勝てない。ますます弱さに拍車がかかる。当の本人は、そ
れでも平気だ。勝ちたいという気持ちが全くなかったわけではない。勝
ったら、そりゃ嬉しいだろう。でも、それ以上に、自分の弱さからくる
あきらめの気持ちのほうが数段優っていた。
こんな状況を見るに見かねたのだろう。ずうずうしい母親がある先生に
特訓をお願いした。もちろん僕には内緒で勝手に決めてきた。
○次回へ続く。
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◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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