「佐藤君の話から」(前編)
今日は僕の友人の話をします。仮に佐藤君としておきます。
彼は小学五年のとき、北海道から神奈川県の横浜市に引っ越してきま
した。転勤族のお父さんの仕事の関係でいろんなところに住んだよう
ですが、ようやく横浜に落ち着くことになりました。
引っ越して間もなく、誰から聞いてきたのか、佐藤君のお母さんが私
立中受験のことを聞いてきました。
「説明会かなんかに行った母ちゃんが塾の先生に乗せられちゃってさ。
それで、中学受験の勉強をすることになったんだよね」
こうして、佐藤君は大手の中学受験専門塾へ通うことになりました。
小5の彼は真面目に勉強しました。
「何にも分かんなくて、そういうもんだと思ってやってたから。結構
キツかったよ。でも、案外、勉強できて、成績とかも塾に入ってすぐ
に上がったんだよね。上の方のクラスになって、ちょっと調子に乗っ
ちゃったね」
ただ、引っ越してきたばかりでどこにどんな学校があるのかなんて分
かりません。5年生のうちは、特にどこに行きたいという気持ちもな
く、ただ中学受験の勉強をしていました。
6年生になりました。そろそろ志望校を決めなくてはなりません。佐
藤君のお母さんもいろいろと学校を探したようですが、彼自身も小学
生なりにいろんな中学校を調べました。
「たくさん調べたけど、そこの学校にしかなかったんだよ。『鉄道ク
ラブ』が。オレ、その頃、鉄道好きだったから、ただ鉄道部があれば
それでよかったんだよね。偏差値とか学校とかまったく関係なくって」
しかし、鉄道クラブがある唯一のその中学校は、神奈川県内でも有名
な男子の超人気校だった。偏差値も当然上位である。
『鉄道クラブ』が志望理由。小学生にとっては、案外、そんなものか
もしれない。
さて、それが彼のモチベーションになったのか。
○次回へ続く

