「そっくり」
ちょっとした騒ぎになっている。
冬期講習初日。授業前、受験を控えた小6生たちが、入り口からある教室
を覗いている。
ダミ声の加奈子の笑い声が廊下に響いた。
「ギャハハハ、そっくりぃ~!」
順番に覗いては、みな一様に「そっくり」と笑う。
みんなが覗き込んでいるのは小4の教室だ。
あぁ、なるほど、ま、気持ちも分かるけど、と思いながらも彼らを退散さ
せる。4年生が気の毒だし、何よりも彼が。
6年生(受験)に「ウエッチ」というあだ名の男の子がいた。性格は、良
く言えば「元気者」。悪く言えば「お調子者」。『猫が寝込んだ』、『布
団が吹っ飛んだ』的な昭和のオヤジギャグを飛ばすが得意だ。「また、ウ
エッチがつまんないこと言ってるよぉ」と批判にさらされることが多い。
「つまんねぇ~~」と真っ先に突っ込みを入れるのが加奈子だ。「ちゃん
とやれよ」とちゃんとやってても言われてしまうウエッチ。しかし、最近
あまり見かけない坊主頭の彼はにっこり笑い、オヤジギャグをめげずに飛
ばすのであった。
宿題を忘れても、テキストを忘れても、とんでもない解答でみんなの爆笑
を誘っても、めげずに逆に張り切るウエッチなのだ。
そんな彼には2つ離れた弟がいる。その弟が冬期講習に参加した。そのこ
とをどこからか聞きつけた小6の連中が弟を一目見ようと小4の教室へ行
った。
すると、そこには、2歳離れているとは思えないほど、ウエッチに瓜二つ
の坊主頭のウエッチ2号がいたのだ。
そうなると止まらない。みんながこぞって弟を見に行く。そして、笑って
自分の教室に帰っていく。
かわいそうに弟君は下を向いて、恥ずかしそうにしている・・・かと思い
きや、何とニコニコ笑いながら手を振ったり、時々変な顔をしながら、6
年生のお兄さん、お姉さんたちを笑わせていいる。ウエッチ2号は、1号
以上の大物だった。
その日のウエッチ1号は、「そっくり」という言葉を何度聞かされたこと
だろう。彼は、その日とうとう、オヤジギャグを一つも飛ばさなかった。
無駄口も叩かなかった。ある意味、快挙である。
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◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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