司馬 遼太郎
人の諸々の愚の第一は、他人に完全を求めるということだ。
◇私たちは、本当には自律(=自立)できない存在だ。どうしたって
他人に依存することになるし、自分以外のものに依存しなければ生き
てはいけない。
◇たとえば、自分だけで考えたことでも、実は以前読んだ本の影響下
にあったりするし、大きな仕事は、どうしても他人と共に行わない限
り、上手くはいかないものだ。だから、他人や他のものから自律(=
自立)することは出来ないのだ。
◇しかし、だからと言って、完全に他人や他のものに依存してしまう
ことも良しとはしない、それが人間だ。少しでも自分で何とかしてい
きたいと思うようになるのが、人間の成長なのだ。依存と自律(=自
立)は、いつでも表裏一体の関係で、推移していくものだ。
◇今日の言霊は、そういう中で、私たちが、陥りがちな心性を注意し
ているのだ。私たちは、ついつい他人に依存しきってしまって、自分
の自律(=自立)を忘れてしまう。
◇他人に完全を求めると言うことは、自分の自律(=自立)を放棄し
てしまうことなのだ。全て他人に頼りきるから、完全を求めるのだ。
他人に依存して、多少はやってもらうが、残りの完成は、自分でしよ
うという意識がないのだ。
◇他人と自分で完成していくのが、私たちの生きる道なのだ。このこ
とを忘れて、他人に完全を求めないようにしよう。この私が生きてい
るのだ。その限りで、他人と協同で人生に参加しているのだ。
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