「引く」(前編)
授業の空き時間があり、自習の見回りをしていた。教室には小学生が10人
ぐらいいた。「分からない問題があったら質問しろよ」と声を掛けて回る。
こんなとき、国語の質問は滅多になく、ほとんどが算数である。質問しろと
言ってはみたものの、全てに答えられるとは限らない。高校受験の数学なら
まだなんとかなる部分もあるのだが、中学受験の算数となると、お手上げと
なるほうが多い。
ただ、そこは生徒も心得たもので、算数を質問するときは「先生、この問題
教えて」とは言わず、「先生、この問題、分かる?」と聞いてくる。
その日も、漢字の練習している2名のほかは、全員が算数のテキストを開い
ていた。
慶介(中学受験5年)の手が止まっている。困り顔の彼に声を掛けた。
「どうした、分かんないのか?」
「うん、先生、この問題、分かる?」
覗いてみると、図形の問題だった。が、それは僕でも分かる簡単な問題だ。
(えっ、これでつまずいてんの?)と思いながら、アドバイス。
「あっ、そうか!」と言い、問題にとりかかる慶介。
おいおい大丈夫かよ、とそのときは正直思ったのだが、どうやら彼だけで
はないらしいのだ。
慶介のことがあり、これ以降、生徒の様子を見ていたら、やはり彼と同様
のことでつまずいているような気がした。
その気付きは僕だけのもので、全く確証がなく、他の先生には言わなかっ
たのだが。
○次回へ続く
*登場する生徒名は仮名です。
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◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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