「引く」(後編)
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○前号のあらすじ
自習の見回りをしていたとき、慶介(中学受験5年)は算数の図形問題で
困っていた。それはとても単純な問題だったのだが、これ以降、生徒の様
子を見ていたら、やはり彼と同様のことでつまずいているような気がした。
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慶介がつまずいていたのは、「円の面積」の問題だ。複雑に重なり合う円が
あり、それについて(1)から(3)までの小問があった。(1)は基本問
題で、(3)が一番難しい。(1)を飛ばして(2)には進めない。(1)で
求めた解答が(2)、(3)にも生かされるからだ。
慶介は(1)で困っていた。円の中に、その円と同じ中心と半径を持つ扇
形があり、その扇形以外の部分の面積を求める問題だ。
算数ができない僕でも一目見て分かった。大きな円の面積から扇形の面積
を引けばいいだけだ。そのための材料も問題で与えられている。
「引けばいいんじゃないの?」と思わず言ってしまった。慶介は「あっ、
そっか!」と言って計算に取り組んだ。
ここからは、何の証拠もデータもない僕の勝手な仮説。
彼らは「引く」ということが苦手なのではないか。もっと言うなら、引き
算の世界では生きていないのではないか。
子供たちは日々、下界からさまざまな刺激を受けながら、いろんなものを
吸収して生きている。その器はとてつもなくでかく、人として大いなる成
長の可能性を秘めている。
彼らの毎日は「足し算」なのだ。新しいものを、覚えて、詰め込んで、蓄
えて、そして生きている。成長を加速させる何かに出会ったとき、足し算
ではなく、「掛け算」が起こる。
こんな世界で生きる子供にとって、「引く」ということは、大人が考える
以上に難しい概念であってもおかしくない。慶介が「引く」のではなく、
なんとかその形のまま答を求めようとしていたのは、ありのままを受け入
れて、自分の中に加えていく生き方をしているからだ。
こう考えると、ちょっと見方も変わってくる。彼らは解けないのではない。
「引く」という作業が苦手なのだ。そういう概念を持っていないのだ。な
らば、教えてやればよい。教科は問わない。「引く」とはどういうことかを。
【引くことを覚えた生徒は合格する】
なんて、大きく言ってみる。繰り返すが、もちろん何の証拠もデータもな
い。ただの実感、である。共感してくれる人、いるかなぁ。
*登場する生徒名は仮名です。
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◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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