【記事】導入進む「習熟度別少人数授業」 きめ細かな指導探る
朝日新聞(2009年4/27)より以下抜粋
○部分実施も含めると、小学校の85%、中学校でも74%(07
年度)で導入されている「習熟度別少人数授業」。昔ながらの一
斉授業ではなく、きめ細かく対応するために子どもの理解度でグ
ループ分けして教えるやり方だが、導入しさえすれば効果が出る
というわけではないことが、文部科学省の調査から浮かび上がっ
た。効果が出るやり方とは。習熟度別以外の方法はどうなのか。
学校現場では試行錯誤が続く。
■的を絞ってベテランが調整役に
○東京都八王子市立弐分方(にぶかた)小学校は4~6年の算数
で、2クラスある各学年を「根気」「本気」「元気」の3グルー
プに分けて習熟度別授業をする。ただ、すべての授業ではなく、
最も多い6年生でも全体の半分程度にとどめる。
○同小では3年前、6年の算数はすべて習熟度別で実施していた。
その結果、上位層は伸びたが、固定しがちな下位層は意欲が薄れ、
授業が成り立たない心配も出たという。そこで、習熟度に関係な
い「均等割り」を導入したり、同じ単元でも一斉授業を取り交ぜ
たりして模索した。
○同校で習熟度別の効果が最も出ているのは計算だという。少数
や分数のかけ算、割り算などでつまずく子どもは多く、差もつき
やすい。わからない子には復習も含めて丁寧に説明し、できる
子には発展的な問題を解かせる。
○一方、図形の面積などの学習では、逆に習熟度別をとらない方
が有効だという。みんなで考えを出し合う中で苦手な子から思わ
ぬ発想が飛び出すこともあり、クラス全体で考えが深まるという。
○福島幸子校長は「習熟度別授業をいかすにはコーディネーター
役が欠かせない」と言う。同校では、担任を持たずに習熟度別を
含む少人数授業を専門とするベテラン教員を置く。クラス担任と
事前に詳しく打ち合わせ、グループに応じた教材開発にも取り組
む。
○加藤幸次・上智大名誉教授(学校教育)は「学級崩壊などが起
こるなか、一斉授業だけで対応するのは無理で、個に応じた教育
が必要だ」と言う。だが、ただやみくもに採り入れるだけでは下
位層の子どもの劣等感を生み、長期的には全体の学力が下がると
指摘。つまずきやすいポイントに絞って徹底的に取り組むべきだ
と強調する。
○また、同名誉教授は「習熟度とは別の観点からの少人数授業も
加味するべきだ」と言う。例えば、あるグループは映像を使い、
別のグループは子ども同士で教え合う。子どもの適性や関心に沿
ったグループ分けが効果的だという。(宮本茂頼)
■小学校の正答率、明確な関係読み取れず
○文部科学省が、08年4月に実施した2回目の全国学力調査の
結果を習熟度別指導とクロスさせた分析を公表したのは先月末。
文科省は、「中学では正答率アップの効果が見られ、全体として
効果的だとわかった」というが、小学校では個々の問題や地域に
よってまちまちだ。
○分析では、算数・数学の成績が下から4分の1の層について
「4分の3以上の授業で習熟度別少人数指導を受けた」グループ
と「習熟度別指導を全く受けていない」グループを取り出し、一
部の計算問題や文章題の正答率を比べた。
○小学校では、習熟度別の子どもの方が、そうでない子どもより
正答率が1ポイント以上高い問題が14問中5問あった。中学校
では20問中4問だった。だが、差は最大でも3ポイントで、受
けていない子の方が正答率が1ポイント以上高い問題も小学校で
は3問あった。単純に見える計算問題でも、習熟度別の効果の表
れはまちまちだ。
○小学校の結果を都道府県別にみると、実施校の方が正答率が1
ポイント以上高い県が10ある一方で、非実施校の方が1ポイン
ト以上高い県も5ある。それ以外は差がほとんどない。
○93~05年度まで、文科省は習熟度別指導に取り組む学校に
教師を加配して支援してきた。学習指導要領の解説書では優越感
や劣等感が生じることがないように注意し、グループが長期化、
固定化して意欲を低下させないように留意するよう求めている。
(葉山梢、上野創)
*私からのコメント
◇習熟度別少人数制は、学習塾の代名詞のようなものだが、進学
塾になればなるほど、この習熟度別少人数制は、上位クラスのた
めのもので、下位クラスのためのものではない。
◇たとえば、進学塾で、6年生が100人いたとすれば、最上位
クラスは選び抜かれた生徒20人、上位クラスは25人、中位ク
ラスは25人、下位クラスは30人という具合で分けられる。こ
ういうクラス分けを進学塾は、定期的にやっていくのだ。それは、
生徒のモチベーションにかかわることだからだ。
◇一般的なクラス分けの効果を言うと次のようになる。最上位ク
ラスに選ばれた生徒は、まさに選別されたことをモチベーション
の源泉にする。上位クラスは、次は最上位クラスに入ろうと敗者
復活戦を誓ってモチベーションの源泉にする。中位クラスからは、
下位クラスに落ちないことをモチベーションの源泉にするように
なるが、下位クラスは、モチベーションの源泉を探しにくくなっ
てしまうのだ。
◇習熟度別少人数制と言うと、生徒の学力レベルに合わせた指導
が効果的だから行なっていると思われているが、進学塾では、そ
のことが主眼ではないのだ。
◇モチベーションの源泉に使っているのと、最上位クラスの学力
を引っ張り上げようとすることを主眼にしているのだ。このこと
をまず押さえてこの記事を読んでみると、習熟度別少人数制は、
その形態だけでは、低学力層の生徒を学力的に引っ張り上げるこ
とは、効果的ではないように思う。
◇学力向上を目論むのならば、生徒のモチベーションに関係する
視点がどうしても必要なのだ。低学力層の生徒には、習熟度別少
人数制よりも、グループ学習を取り入れて、社会的な文脈から学
習を行なった方が、効果的だと思う。誰でもが主役になれる機会
を持つことのほうが、学習意欲が湧くからだ。
◇教える視点よりもまず、生徒のやる気を引き出す視点を学校に
も導入するべきだ。この視点を持つことが、学力向上の第一歩だ。
そのために、わかる授業を保証しようと言うのならば、習熟度別
少人数制の形態をとって、下位クラスは、教え方の工夫と使用教
材の工夫をすることだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━