「思いと願い」(その5)
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○前回のあらすじ
1月30日。東京・神奈川の私立中学入試解禁日の2月1日を前に、校舎
では、受験に臨む6年生への壮行会が行われた。
教師が一人ずつ、彼らへ向けて激励の話をする。僕の前に話したのが神戸
出身のR先生だった。
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1月30日。東京・神奈川の私立中学入試解禁日の2月1日を前に、校舎
では、受験に臨む6年生への壮行会が行われた。教師が一人ずつ、彼らへ
向けて激励の話をする。僕の前に話したのがR先生だった。
そのとき、豪快で明るいキャラクターのR先生が、自分の過去に初めて触
れた。彼が出身地の神戸で学習塾の講師をしていた時代。あの出来事が起
こった。
「僕が神戸で塾の先生をしていたころです・・・」
いつもの明るさは消え、静かに生徒たちに語り始める。静けさと緊張感が
教室を包んだ。
「阪神大震災が起こりました・・・。
僕の教えていた生徒たちも被害にあって、亡くなった子もたくさんいます。
毎年1月にはお墓参りに帰っています。この前も行ってきました・・・」
彼は、神戸の実家には10年以上帰っていないのだが、お墓参りには毎年
行っていたのだ。涙ながらに語るR先生の姿と話の内容にちょっとこらえ
られなくなってきた。
「亡くなった子の中には、受験生もいました。元気に受験できるのは幸せ
なことだと思います。
それから・・・。
地震のとき、お医者さんが、本当に足りなくて困りました・・・・。です
から、もしよければ、お医者さんになって下さい」
あの明るい性格の陰にどれだけの悲しみを背負っていたのか。それを初め
て知った。知って、そして泣けてきた。
壮行会が終わって、いつもの調子でR先生が話しかけてきた。
「いやぁ、荒木先生、泣いてましたね。先生も泣くんですね!」
「泣いたのはアンタのせいでしょ」。僕が言うと、「ハハハ」と豪快に笑っ
て印刷室へ消えていった。
いろんな思いや願いを込めて、今日も先生たちが子供たちを指導している。
子供たちにしてみれば、そんなもんを全面的に押し付けられても迷惑だろ
う。「うぜぇ」なんて言うかもしれない。それもよく分かる。
しかし、と僕は思う。先生はどっかに、ある種ロマンティックなところが
ないとダメなんじゃないかって。たまには自分の思いや願いを正直に語っ
てみるのも悪くないような気がする。
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◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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