公立中高一貫校が、必要なのか!
【記事】中高一貫、1期生評価は 伊奈学園中・高校 埼玉
朝日新聞(2009年7/16)より以下抜粋
○埼玉県教育局は、03年度から中高一貫教育を導入した県立伊奈学園中・高校(伊奈町)について、今年3月に卒業した1期生と保護者に実施したアンケート結果をまとめた。6年間に及ぶ学校生活や部活動には卒業生の8割以上が満足していたものの、「進路にじっくり取り組めた」との回答は半数に満たなかった。高校受験にわずらわされない進路指導が目標の一つだけに、今後、指導のあり方を見直すなどする考えだ。(小林祝子)
○調査は昨年11月と今年3月、1期生と保護者各76人に行った。卒業生に「高校受験がないことで進路にじっくり取り組めたか」と聞いたところ、「そう思う」「ややそう思う」は計43.4%にとどまった。一方、「あまりそう思わない」「そう思わない」は同56.6%だった。同校は、「生徒の個性を伸ばし、進路実現を保障する中高一貫教育」を目指しており、設立の趣旨が必ずしも十分に生かされていない格好。具体的な授業内容になると、「『総合的な学習の時間』のキャリア教育は進路選択に有効でなかった」(計76.3%)、「『化学の先取り授業』の進度は適当でなかった」(計63.5%)など、否定的な回答がより目立った。
○ただ、保護者からは「将来の進路についてじっくり考えられた」(計71.5%)、「卒業後の進路に満足している」(計88.6%)など肯定的な回答が大半を占めた。このため教育局は「保護者とのギャップを見ると、生徒側には6年間のうちに中だるみなどの不安を感じるということがあるのかもしれない」と分析。今後も同様の調査を重ねながら、進路指導や授業内容の改善を図っていく考えだ。
○同校は高校に中学校を併設する形で開校した県内初の公立中高一貫校で、教育局によると、高校入試をしないことで生まれた時間を使う数学や化学の先取り学習▽理解しやすさを重視し、中学と高校の教育課程の一部入れ替え▽ボランティアや職場体験など体験的学習――などの授業が特徴。1期生76人のうち50人以上が今春、大学に進学した。
*私からのコメント
◇公立中高一貫校は、最近の流行だ。全国でどんどん開校している。しかし、この公立中高一貫校は、何のために、開設されているのだろう。このことを問うことを私たちは、あまり真剣にしてこなかったが、教育的な文脈で、そろそろしてもいいのではないだろうか。
◇教育行政の側から言えば、公立中高一貫校は、公立と私立の大学合格競争の大きな助っ人ということだ。大学実績で水をあけられた公立高校の巻き返しの切り札だ。私立中高一貫校に負けないエリート教育を実現するためのものだ(例外的な学校は、あるけれど)。この目的の建前として、記事にもあるように、「高校受験にわずらわされない進路指導」ということが挙げられているのだ。
◇公立中高一貫校が、もし本当に私立中高一貫校に対抗しようとすれば、それだけ投資をしなければならない。教師研修も教育プログラムも数々の教育プロセスにお金をかけなければ、難しいのだ。そして、その投資効果を保証するためには、どうしても小学校から中学校に上がる段階で、選抜をしなければならない。これは、自明なことだ。それを文科省は、明らかに誤魔化している。適性検査という名の下に生徒を選抜しているのに、そうではないと言い張っている。こんな欺瞞的なことで、教育システムを運用していいはずはない。このことを先ず問題にしたい。
◇そして、もう一つ問題にしたいのが、入試という通過儀礼の設定時期だ。私立中学の入試は、あえて言えば年収700万円以上の親の子どもが行なうものだから、特殊なことだし、もし私立中学に入学すれば、教育サービス的に言って、公立中高一貫校よりもいろいろな仕掛けがあるから、通過儀礼的な要素が随所に見られる可能性があるが、公立中高一貫校の場合は、この記事にもあるようにそれほど期待できないかもしれない。とすれば、「高校受験にわずらわされない進路指導」の名の下に、入試という通過儀礼を前倒ししていいのだろうか。思春期(=反抗期=自律期)に自分の進路選択にあれこれ悩むことは、非常に大きな人生の学びになるのではないだろうか。入試が、通過儀礼だといわれるのは、今までの自分を振り返って、新しい自分を求めようとするきっかけに入試がなるからだ。そういう機会を奪うことはないように思うが、どうだろうか。一部の限られた中学受験(公立中高一貫校の入試は、適性検査)が、公立中高一貫校の設立ラッシュで、どんどん広まっていくことが、いいことなのか、真剣に考えてみてもいい時期ではないだろうか。

