入試の多様化を謳わなくても良い状況になったのか!?
【記事】高校入試:公立高「学力」重視へ 広がる推薦廃止
中学生のレベル低下背景 13年度までに8県転換
毎日新聞(2009年11/3)より以下抜粋
○公立高校の入学試験で、学力検査がない推薦型の選考方法を見直す動
きが広がっている。和歌山県と静岡県がすでに一般入試に一本化したほ
か、埼玉など3県が来春入学の10年度入試から、千葉など3県が13
年度までに、すべての受験生が学力検査を受ける方式に改める。学力検
査なしに入学できる高校の増加が、中学生の「学力低下」の一因という
指摘が背景にある。【井上俊樹】
○学力検査がない入試には中学校長が推薦する「推薦入試」のほか、
「自己推薦」や「特色選抜」などと呼ばれる試験があり、調査書や面接、
小論文などで選考する場合が多い。
○毎日新聞が全国の都道府県教育委員会に確認したところ、大阪府は以
前から推薦入試がなかった。和歌山県は07年度、静岡県は08年度か
ら学力検査を課すようになっており、残る44都道府県で学力検査なし
の推薦入試が行われていた。
○このうち青森、埼玉、高知の3県はこれまで一般入試の前に行ってい
た、学力検査のない入試を10年度から廃止。一般入試後に行う後期試
験でも3教科の学力検査を課す。また、千葉県と徳島県は11年度から、
前後2回ある試験の両方で5教科の学力検査を行うことにした。
○推薦入試は80年ごろから農業や工業などの専門科で始まり、90年
代には普通科にも拡大。その後、自己推薦や特色選抜などに切り替える
教委が相次いだため、学力検査を受けずに入学する生徒が一気に増えた。
○今春の入学者の4割が自己推薦組で、学校によっては8割に上る埼玉
県教委は「『学力検査がないため学習習慣が定着しない』という声があ
る」と説明。79年度の推薦入試導入以来、約30年ぶりに全受験生が
学力検査を受ける。高校側は「高校入学のレベルに達していない生徒が
多すぎる。中学時代にもう少し勉強するようになるのでは」(県立高校
校長)と期待する。
○10月22日の東京都教委では「推薦の募集人数が多すぎる」という
批判の声が上がり、募集枠が決まらない異例の事態となった。翌週の再
協議で当初案通りとなったが、11年度以降の推薦入試のあり方につい
て今後検討することが決まった。また、栃木県教委が近く、推薦廃止も
含めた入試改革の検討を行う有識者会議を発足させるなど、見直し論議
は今後も広がりそうだ。
○高校の入試制度に詳しい聖学院大学の小川洋教授(教育学)は「私立
高校の人気が高い地域ほど、早めに生徒を確保しようと推薦による合格
者を増やしてきたが、今になって枠を拡大しすぎたことに気付いたので
は」と指摘している。
私のコメント
◇今回の動きはどんどん広がるように思われる。それは、学力を重視す
る風潮が社会に広まったからだ。入試の多様化なんて言葉は、どんどん
死語になっていくだろう。
◇入試制度とは、本来学力による選抜を旨としてきた。それを生徒の個
性を尊重しようと、学力検査のない入試形態を取り入れ、学力を問わな
いようにしてきたのだ。なぜそうしてきたかと言えば、エリート(高学力
層)と大衆(低学力層)の格差をつけるためだ。
◇学力を問わない推薦入試は、学力の高い生徒と学力の低い、学力に自
信のない生徒では、どちらに魅力的に映るだろうか。学力の低い生徒は、
推薦入試に期待をかけて、益々勉強しなくなっていくのだ。
◇しかし、である。推薦入試は、高校選抜の唯一の選抜形態ではない。
同一高校に推薦入試の定員枠と一般入試の定員枠が、存在するのだ。中
堅高校と言われている高校では、推薦入試と一般入試の定員枠は、1:1
であるが、上位高校では、推薦入試と一般入試の定員枠は、3:7前後に
なっていて、推薦入試で定員を割く分、一般入試の競争が厳しくなって、
従来よりも学力のある生徒を結果的に取る仕組みになっている。今までの
ように、すべて一般入試枠であれば、学力の低い生徒も合格になっていた
ものが、不合格になることになる。学力検査的には、合格レベルが上がる
のだ。
◇しかし、推薦入試枠で学力の低い生徒も紛れ込むのだ。しかもその率が
大きいのだ。つまり、推薦入試を導入することで、同じ高校の中でも、入
学者の学力格差が従来よりも大きく出てしまうのだ。結果的に、高校生の
学力が大きく二極化して、大学受験を迎えるようになっていくのだ。それ
が、教育行政の狙いだ。隠れたエリート教育に向かうために。
◇当然、高校入試における選抜の意味が、不透明になる。中学を卒業して、
ある程度の学力差が生まれるから、学力検査を行なって、入学者の学力を
ある程度均質にしようとしているのに、学力格差を助長させるような、入
試形態なのだ。こんな矛盾はないだろう。
◇しかし、問題になることを承知で、行なったのだ。それは、学力低下問
題を際立たせるためだ。入試の多様化といって、生徒の個性を尊重してい
るような選抜は、やはり駄目で、学力で選抜試験をしたほうがいいのだ!
とはっきり世間に言うために、わざわざ推薦入試を導入したのだ。そう考
えた方がよい。
◇そして、今回の推薦入試の廃止の動きなのだ。今後、日本の教育は、学
力偏重にどんどん舵を取る。このことは間違いのないことだ。だから、教
育行政の発する美辞麗句には、気をつけたほうが良い。2002年の教育
改革といい、昨今の教育行政の決定といい、隠れた意図のないものはない
のだ。気をつけて教育行政を見ていくことだ。

