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自由競争で学校制度が、蘇るだろうか?

【記事】だめな高校は退場してもらう 橋下知事の改革始動

朝日新聞(2010年3月8日)より以下抜粋

○だめな高校は公立、私立とも退場してもらう――。
大阪府の橋下徹知事の高校改革が今春、本格的に始まる。公私間の授業
料格差を無くすため、府の私立助成を大幅に拡充。
公私で生徒の獲得を競わせる。また、芸術やスポーツなどの分野で成果
を上げた公立に助成金を約束するなど、公立同士の競争も後押しする。
知事がこだわる「競争原理」は、大阪の教育の質を向上させられるのか。

○「公立と私立が競争できるような条件をつくるため、府のお金を投入
します。
私立の皆さんには、公立の受験生を奪うんだという意気込みで戦っても
らいたい」。2月1日に大阪市内で開かれた「大阪私学保護者の集い」
で、橋下知事が声を張り上げた。

○2009年度の府内の高校授業料は公立の年間14万4千円に対し、
私立は同平均約55万円。4月から鳩山政権によって公立の授業料が無
償化される。
橋下知事はこれに併せて、府内在住の私立高校生について、年収350
万円未満の世帯を無償化できるよう府独自に助成する。
11年度には、府内の私立高校生の半分をカバーするとみられる年収6
80万円程度の世帯にまで助成を広げる方針だ。

○公立と私立の授業料の差が縮まれば、生徒や保護者が家庭の経済事情
にかかわらず、自由に学校を選べるようになる。
そうなれば、進路の判断基準は純粋に良い学校かどうかだ。各高校が生
徒獲得競争を勝ち抜くために魅力ある学校づくりに励めば、教育の質の
向上につながる――。橋下知事はそう考えている。
 
○助成拡充の一方で、橋下知事は記者会見や議会で「競争を重視する制
度の中では、経営的に成り立たない学校は倒れても仕方ない」と、クギ
を刺す。

○橋下知事は、人気のない公立高校の「撤退ルール」を策定する意向も
示している。
2月、報道各社とのインタビューで「募集定員の何割を下回れば公立は
撤退、と決めておかねばならない。良い学校が残ればよい」と述べた。

○その一方で、橋下知事は10年度当初予算案に、公立高校同士に競争
を促す制度を盛り込んだ。有名大学への進学実績で府内トップ級とされ
る北野、大手前など府立10校を「進学指導特色校」に指定。
手厚く支援するため、各校をオンラインで結ぶ進路支援システムの構築
などに1億637万円を計上した。

○橋下知事は「頑張る学校は新たに特色校の指定に挑戦でき、そうでな
い学校は指定から外れる。
そのような競争のシステムが必要だ」と強調し、特色校を入れ替え制に
するよう府教委に求めている。

○芸術やスポーツの分野でも競わせる。コンクールや全国大会などでめ
ざましい成果を上げた府立高校の専門学科を支援する予算に3千万円を
計上した。

○府南部の府立高校校長は「全国1位など、脚光を浴びる生徒はごく一
部。(学力的に)しんどい生徒を底上げすることが大阪全体の活性化に
つながるはずなのに、そういう努力をした高校が評価される仕組みになっ
ていない」と指摘する。

○知的障害のある生徒とない生徒が同じ教室で学ぶコースを設置してい
る府立高校の校長は「勉強やスポーツ、芸術などの一面的な競争では得
られない取り組みも必要だ」。
別の校長は「公立は地域とのつながりが強い。地域の子どもをしっかり
育てることが公立の成果なんだと分かってもらえるよう地道にPRして
いきたい」と話す。(左古将規)
     


*私からのコメント

◇大阪府の橋本知事の試みは、画期的なものだ。
公立高校・私立高校の授業料という垣根を取っ払って、教育の質で自由
競争を促す試みは、画期的なことだ。
選ばれる学校作りを徹底的に行なってほしいという願いがそこにはある
のだろう。
この願い自体は、大変いいことだし、私もこの思いには賛成だが、しか
し、よくよく考えてみるとどうだろうか。単純に、全面賛成ということ
にはならないかもしれない。

◇まず、この考えの背景にあることに対して疑問がある。
それは、教育を単なるサービス業と考えていないかということだ。
サービス業と教育サービス業の違いを無視して、学校間の自由競争を行
なうのであれば、日本の人的資本の育成は、どうしようもないほど衰退
し、低水準に甘んじることになる。

◇サービス業と教育サービス業の基本的な構えは、サービスの場に指導
性があるかどうかということだ。
サービス業には、指導性はない。例えば、居酒屋でお客から注文を受け
たものに対して、サービス提供者は、メニューにあるものであれば、何
でも注文に応じる。

◇それに対して、教育サービス業は、そういう注文がお客の不利益にな
ると考えれば、その注文に応じることはしない。
その注文に指導を入れ、お客の不利益にならないようにしていくのだ。
ここにサービス業と教育サービス業の違いがあるのだ。迎合主義に教育
が堕落していくようになったら、大変だということだ。

◇もう一つ、心配なことがある。それは、自由競争を促すということは、
画一的な価値観が、学校選択の中では支配する可能性があるということ
だ。
学校制度の本質的な機能が、管理と選抜だとすれば、選抜の方向へシフ
トし、上位学校(有名大学)への合格率に全ての高校が向かおうとしな
いかということだ。
多様な志向を持った人間の受け皿としての学校が消えていってしまうの
ではないかという懸念だ。

◇学校で学ぶことが、教科内容だけになってしまい、子どもの成長を保
証しないような学校ばかりが、増えていくのは、大きな問題だと思う。
競争は、画一的な価値観を生むものだ。
これは、人間の歴史が証明しているところでもある。生徒集めのためだ
けに色々な施策が、高校で行なわれないとも限らない。そうならないよ
うにしてほしい。

◇学校の、教師の、意識は変える必要があることは、承知しているが
(私も学校法人の理事としてそのことは痛切に感じる)、その仕掛けと
して、今回のことが考えられているとすれば、それは、大きな間違いを
引き起こしかねないと私は思う。
学校は学習塾とは全く違う機能を持っているのだ。
同じように考えてしまってはいけないよう思う。学習塾の中心には、学
力がついて回るが、学校の中心には、学力だけではなく、総合的な能力
(人間力)がついて回るのだ。
そのことを意識した学校制度改革にしなければならないように思うが、
どうだろうか。


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    ◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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