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「教科書の思い出」(後編)

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○前回のあらすじ

インターネットで「国語 教科書 思い出」などで検索したら、結構な数の
掲示板などがヒットした。

私にも思い出の教科書作品があるのだが、一番のそれは、高校生のときに
習った作品だ。それは僕の甘酸っぱい思い出と結びついて忘れられないも
のとなっている。

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確かこんな話しだったと記憶している。

ある少年が病気でものすごく痩せてしまう。入院中、彼が好意を寄せる少女
が見舞いに訪れ、変わり果てた姿を見られてしまう。
退院後、一転、痩せていた少年は、今度はぶくぶくと太ってしまう。

改めて調べてみて、この短編小説は吉行淳之介の「童謡」であることが分かっ
た。恥ずかしながら、タイトルも作者も全く覚えていなかった。

また、少年と少女のほかに少年の友人が登場するのだが、このことも忘れて
いた。

では、なぜ、思い出の作品なのか。

この授業で、国語のイシクラ先生がみんなにある質問をした。

「この少女は少年のことが嫌いになったと思いますか?」

『少女もどうやら少年に好意を寄せている』というところが質問の発端であ
る(実際、そうなのかは分からないが)。

物語は少年が太ったところで終わっているのだが、もし、この少女が少年の
太った姿を見たらどう思うだろうか。ガリガリに痩せた少年、ぶくぶくと太っ
た少年。
この変わり果てた二つの姿を見ても、それでも、少女は少年のことが好きな
のか。こう授業は展開した。

そして、前述の質問である。

イシクラ先生は縦一列の生徒全員に答えさせる。その一列に僕も入っている。

『先生が答えさせたい答え』は明白だ。
外見は変わっても本質は変わらないのだから、嫌いになるはずがない。

正解は「嫌いにはならない」、「やっぱり好きである」だ。
これは、国語が嫌いだった当時の僕でもはっきりと分かった。

みんなも同じだったらしい。前から順番に「嫌いにならないと思います」
と異口同音に答えていく。

しかし、僕はこう答えた。

「嫌いになったと思います」。

その瞬間、イシクラ先生は、意外そうな顔をして、けれども、また冷静に
「嫌いにはならない」という答えとその解説を始めた。

実は。

そのひと月まえぐらいだろうか。同じクラスの女の子に僕はフラれてしまっ
た。同じ空間でその子も同じ授業を受け、先生の同じ質問を聞いている。
僕の答えも聞いている。

だから、僕は「嫌いになった」とあえて違う答えを発したのだった。
自分のことながら思う。なんと情けない男なのかと。

高校時代の淡い恋とイシクラ先生の質問と。恥ずかしさと情けなさと甘酸っ
ぱさと。吉行淳之介の「童謡」とセットで思い出す出来事と気持ちである。

あなたにも思い出の教科書の作品があるだろうか。

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    ◇◇◇ Global Thinking and Local Acting ◇◇◇
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